よび石の話

 小河内の下三根(しもみね)に、それはそれは大きな岩があり、昔“よび石”と呼ばれていました。その岩は、大地震があったときに山の上からゴロゴロと転がり落ちてきたものだといわれています。
 その頃そこには、年老いた夫婦が住んでおり、二人は大地震のとき、家もろともその大きな岩の下敷きになってしまいました、たいそう悲しんだ周りの人たちは、
「じっつあん〜。ばあさ〜ん。」
と、泣きながら声を限りに叫びました。すると、どうでしょう。ふしぎなことに岩の下から、
「じっつあん、ばあさんはここにおるよ。」
と、言い返してきたのです。
 それから幾日か経って、またその岩に向かって叫んでみました。するとやっぱり、
「じっつあん、ばあさんはここにおるよ。」
と、返事が返ってくるのです。
 それ以後、小河内ではこのことがずい分話題になって、みんなが岩に向かって大きな声で叫び始めました。
「佐助さんよ〜。糸やんよ〜。」
と、懐かしい人の名前を呼ぶと、
「佐助さん、糸やんはここにおるよう。」
と、岩の方から返事が返ってきました。小河内の人たちは不思議な岩だといって、誰ともなくこの岩を“よび石”と言うようになったということです。
 今でも下三根にはたくさんの岩があります。 


この石ではないかと・・近所の方が話された。